日本語サイトをそのまま翻訳しても伝わらない理由

英語ページを追加したのに、海外からの問い合わせが増えない。翻訳の質が悪かったのだろうか、と考える方は多いのですが、原因はたいてい別のところにあります。 日本語サイトの構成は、日本の商習慣を前提に組み立てられています。翻訳はその構成を保ったまま言語だけを置き換える作業なので、もともと載っていない情報は、翻訳しても現れません。ここでは、多言語化を検討する段階で押さえておくべき構造的な論点と、範囲の絞り方、そして今は着手しないほうがよい場合について整理します。

日本語サイトの構成は、日本の商習慣を前提にしています

会社概要、沿革、代表あいさつ、企業理念。日本の企業サイトでこれらが上位に置かれるのは、取引先が「信用できる会社か」を確認する順序に沿っているからです。この構成は国内では合理的に機能します。

一方、海外の読者がまず探すのは、何を、どこまで、どういう条件で受けてもらえるのか、という実務的な情報です。会社の歴史を読んでから問い合わせるという順序を前提にしていません。翻訳された沿革ページを読んでも、判断に必要な情報はそこにないため、離脱します。

つまり多言語化の第一歩は翻訳ではなく、外国語版に載せるべき項目を洗い出すことです。日本語版に存在しない項目であれば、原稿を新しく書く必要があります。ここを飛ばして翻訳会社に発注すると、日本語版の忠実な訳ができあがるだけになります。

  • 対応できる範囲と、対応できない範囲(地域、業種、規模)
  • 一般的な進め方の流れ(納期や金額の約束ではなく、手順の説明として)
  • 連絡手段と、返信できる時間帯(時差があることを前提に)
  • 支払い方法と、どの通貨での取引になるか
  • 配送や受け渡しの条件が関わる場合はその条件

自動翻訳に任せると壊れやすいもの

自動翻訳そのものが悪いわけではありません。壊れるのは、全ページを機械に任せて放置する運用です。特に、固有名詞と数値の表記は崩れやすく、しかも社内では気づきにくい部分です。

自社の社名や製品名が意図せず訳されてしまうと、海外の相手が検索しても見つけられません。住所の並び順が日本式のまま訳されれば、郵送や訪問の場面で混乱します。フォームのラベルとエラーメッセージが日本語のまま残っていて、送信できずに諦められている、というケースもあります。

対策はシンプルで、翻訳する範囲を絞ることです。主要ページだけを人の手で作り、それ以外は翻訳しない。あるいは「このページは日本語のみです」と明示する。全ページが中途半端に訳されている状態より、読者にとっても誠実です。

  • 会社名、製品名、人名などの固有名詞
  • 住所と郵便番号の並び順
  • 日付、数量、単位の表記
  • フォームのラベル、必須表示、エラーメッセージ
  • PDFなど、ページの外に置かれた資料の中身
  • 電話番号(国番号が付いていないと海外からかけられません)

どの言語を、どこまで作るか

全ページを多言語にする計画は、ほとんどの場合、運用の段階で止まります。更新頻度の高いページを多言語にすると、必ずどちらかが古くなるためです。お知らせや採用情報がその代表です。

現実的なのは、内容が安定しているページから始めることです。事業内容、対応範囲、製品や仕様の説明、問い合わせ。これらは一度作れば頻繁な更新を必要としません。逆に、日々更新されるページは日本語のみとし、その旨を明示するほうが破綻しません。

言語の選定も、需要ではなく対応体制から逆算します。問い合わせが来たときに、その言語で返信できる人がいるか。いなければ、返信できる言語(英語のみ、など)に絞ったほうが結果は良くなります。

URLと言語の切り替えは、公開前に決める

多言語サイトでは、言語ごとにURLをどう分けるかを最初に決めます。後から変えるとリンクや検索結果に影響が出るため、公開前に確定させるべき項目です。

あわせて、hreflangによる言語・地域の指定を行います。多言語・多地域サイトのURL構成とhreflangの指定方法については、Google Search Centralの公式ドキュメントに推奨事項がまとめられています。実装の詳細はそちらを一次情報として確認してください。

運用面で注意したいのが自動リダイレクトです。ブラウザの言語設定を見て強制的に転送すると、日本語版を見たい海外在住の関係者や、英語版を確認したい国内の担当者が意図した版にたどり着けなくなります。案内は出しても、切り替えの判断は読者に委ねるほうが安全です。

  • 言語切替のリンクを、全ページで同じ位置に置く
  • 対応していないページに切り替えたとき、トップページへ飛ばさず状況を伝える
  • 日本語版と外国語版でナビゲーションの構造を揃える(別物にすると保守が二重になります)

多言語化を、今はやらないほうがよい場合

正直に書くと、着手を勧めない状況があります。

ひとつは、問い合わせが来ても対応できる人が社内にいない場合です。返信されない問い合わせは、何もない状態より印象を悪くします。まず窓口と対応体制を決め、それから公開する順序をお勧めします。

もうひとつは、日本語サイト自体に、判断に必要な情報が載っていない場合です。日本語で書かれていない内容は、翻訳しても存在しません。この場合は日本語版の情報整理が先で、多言語化はその後になります。順番を逆にすると、二度作り直すことになります。

逆に、すでに海外からの問い合わせが継続して来ていて、返信できる担当者がいるなら、主要ページだけでも先に整える価値は十分にあります。全部を揃えてから公開する必要はありません。

よくある質問

翻訳プラグインを入れるのと、外国語版のページを作るのは、どちらがよいですか。

目的によります。社内資料的な閲覧の利便性が目的ならプラグインでも足りますが、検索から見つけてもらい問い合わせにつなげたいのであれば、ページとして持つほうが確実です。プラグインによる出力は、URL構成や更新の扱いがサービス依存になるため、公開前に仕様を確認してください。

英語だけ用意すれば十分でしょうか。

多くの場合、最初は英語で始めるのが現実的です。ただし、実際に問い合わせが来ている国が偏っているなら、その言語を優先する判断もあります。判断材料は、これまでに受けた問い合わせの発信元と、社内で返信できる言語です。需要の推測より、実績のある経路を優先してください。

日本語版を更新するたびに、外国語版も更新しなければなりませんか。

更新頻度の高いページを外国語版に含めた場合はそうなります。それが負担になるなら、外国語版の対象を更新の少ないページに絞る設計にしてください。運用が続かない構成を選ぶより、範囲を絞って正確な状態を保つほうが結果は良くなります。

社名や製品名は翻訳すべきでしょうか。

原則として訳さず、そのまま表記します。訳してしまうと、海外の相手が検索しても見つけられなくなり、書類上の名称とも一致しなくなります。読み方の補足が必要な場合は、初出の箇所で説明を添える形をお勧めします。

どのページを多言語化し、どこは日本語のままにするかという範囲の切り分けから相談できます。Karkium Webは海外を拠点とするリモートの制作スタジオで、これまでの制作はラテンアメリカやイスラエルの案件が中心です(TripeoVzla、Tejas Castiblanco、B-MONZ など)。日本国内に拠点はなく、打ち合わせはオンライン、費用は案件ごとの個別見積もりとなります。

ほかの記事

プロジェクトを始める