Web制作の相見積もりで、比較できない見積書をどう比べるか

「相見積もりを3社取っておいてください」と言われて集めたものの、届いた見積書は金額の桁も項目の並びもそろわない。片方は工程ごとに細かく分かれているのに、もう片方は「デザイン一式」の一行だけ——。比較にならない原因は、たいてい金額ではなく前提条件のばらつきにあります。安いほうが手を抜いているとは限らず、単に見ている範囲がそもそも狭いだけ、ということも珍しくありません。ここでは、手元の見積書を同じ土俵に乗せ、稟議で必ず聞かれる「なぜこの会社なのか」に答えられる状態まで持っていく手順を整理します。

「一式」表記の見積書が比較できない構造的な理由

制作会社は、自社の進め方に沿って見積書を作ります。ワイヤーフレームを工程として立てる会社もあれば、デザイン工程に含めてしまう会社もある。下層ページを単価×本数で積む会社もあれば、サイト全体で一本にする会社もある。つまり見積書の粒度の違いは、そのまま各社の仕事の進め方の違いです。

そのため、行数や単価をそろえようとしても意味がありません。見るべきは、金額の裏側にある「どこまでやるのか」です。同じ『トップページデザイン』という一行でも、原稿を誰が書くのか、写真は誰が用意するのか、修正は何回までかで、実際の作業量は大きく変わります。

まず各社の見積書に対して、次の点が読み取れるかを確認してください。読み取れない項目こそ、後から追加費用になりやすい部分です。

  • 対象ページ数と、下層ページが増えたときの単価の考え方
  • スマートフォン表示は含まれるのか、別項目なのか
  • 原稿・写真・図版は誰が用意する前提か
  • デザインおよび実装の修正回数の上限
  • CMSで自社更新できるようにする範囲(全ページか、お知らせだけか)
  • 公開後の初期不具合対応が、いつまで無償で含まれるか
  • フォームの項目数と、送信先・自動返信の要件

見積書を比べる前に、配る前提条件をそろえる

比較できない見積書がそろってしまった時点で、実はやり直したほうが早いことが多いです。といっても最初から取り直すのではなく、各社に同じ前提条件を渡して、その条件での金額を出し直してもらう、という進め方になります。

渡す前提条件は、分厚い提案依頼書である必要はありません。ページ一覧(仮でよい)、原稿と写真の担当、自社で更新したい箇所、フォームで受けたい情報、公開希望時期。この5点がそろうだけで、各社の見積もりは驚くほど近い形になります。

この作業は、相見積もりを値引きの材料にするためではありません。同じ条件で見たときに、どこに差が出るのかを見えるようにするための整地です。結果として金額が上がる会社が出てくることもありますが、それは当初の見積もりが小さく見えていただけ、という発見でもあります。

初期費用より、あとから効いてくる月額と契約終了時の条件

初期費用は一度きりですが、サーバー・ドメイン・SSL・CMSやプラグインの更新・軽微な修正といった運用側の費用は、円建てで毎月積み上がっていきます。数年単位で見ると、初期費用の差より運用費の差のほうが大きくなることもあります。

そしてもう一つ、見積書にはまず書かれていないのが「契約が終わるとき」の条件です。次の制作会社に移る場面、あるいは自社で運用に切り替える場面で、何を返してもらえるのか。ここが不明なまま契約すると、数年後に身動きが取れなくなります。

見積もりの段階で、次の点は文面で確認しておく価値があります。答えにくそうにする会社があれば、それ自体が判断材料です。

  • ドメインの登録者名義は自社になっているか
  • サーバーの契約アカウントは自社名義か、制作会社の相乗りか
  • 制作物の著作権および利用範囲(他社で改修してよいか)
  • 保守に含まれる作業と、含まれず都度見積もりになる作業の線引き
  • 障害時の一次連絡先、対応時間帯、連絡手段
  • 解約時のデータ・ソースコードの引き渡し範囲

稟議に通す資料は、比較表ではなく「金額差の理由」で書く

決裁者が3社の比較表を隅々まで読むことは、あまりありません。見られるのは、なぜこの会社を選んだのか、そしてなぜ他社との差額を払う価値があるのか、の2点です。

そこで、比較表を作る前に判断軸を先に決めてしまうほうが早く進みます。たとえば「公開後に自社で月4回更新できること」「問い合わせを既存の顧客管理に流し込めること」「担当者が1人抜けても運用が止まらないこと」。この軸に対して各社がどう答えたかを書けば、金額差の理由は自然に文章になります。

逆に、軸を決めずに比較表だけを作ると、決裁者は必ず一番安い列を指します。それは決裁者が短絡的なのではなく、安さ以外の判断材料が資料に載っていないからです。

安いほうを選んでいい場合と、選ばないほうがいい場合

すべての案件で、丁寧な設計が必要なわけではありません。掲載期間が決まっている告知ページ、採用シーズンだけの募集ページ、内容がほぼ固定の会社案内。こうしたものは、安く早い選択で十分に目的を果たします。過剰な仕様は、担当者の運用負荷になるだけです。

一方で、更新頻度が高いサイト、既存の業務システムや顧客管理と連携させたいサイト、多言語で展開するサイトでは、その場の安さは後から戻ってきます。構造を作り直す費用は、最初に作る費用より高くつくことがほとんどだからです。

なお、私たちのような海外拠点のリモート制作体制が向かない場面も、はっきりあります。対面での定例打ち合わせが前提の案件、社内に常駐しての運用が必要な案件、紙の押印プロセスに深く入り込む必要がある案件は、日本国内の制作会社のほうが確実です。相見積もりの1社として比較していただく前提で、この点は先にお伝えしています。

よくある質問

相見積もりは何社取るのが適切ですか。

社内規程で社数が決まっているならそれに従いますが、実務上は3社を超えると比較の手間が増えるだけで精度は上がりにくくなります。それよりも、同じ前提条件を渡した2社のほうが、条件バラバラの5社より判断しやすくなります。

1社だけ極端に安い見積もりが出てきました。避けるべきでしょうか。

金額だけでは判断できません。まず、対象ページ数・原稿の担当・修正回数・スマートフォン対応の扱いを確認してください。安さの理由が範囲の狭さにあるなら、条件をそろえた再見積もりで差は縮まります。理由が説明されない場合は、その説明の姿勢自体を判断材料にしてください。

見積もりを取る前に、社内で決めておくことはありますか。

あります。目的、更新したい範囲、原稿と写真の担当、公開希望時期の4点が決まっていないと、どの会社に頼んでも見積もりは仮のものになります。この準備については別記事で詳しく扱っています。

海外のリモート制作会社に依頼する場合、何を確認すべきですか。

連絡手段と対応時間帯、書面のやり取りをどの言語で行うか、支払いの通貨と方法、そして契約終了時の引き渡し条件です。ここが最初に明文化されていれば、距離そのものは大きな問題になりにくい部分です。

稟議で必ず聞かれることは何ですか。

「なぜこの会社か」「なぜこの金額か」「公開後は誰が運用するのか」の3点です。3つ目が抜けた稟議書は差し戻されやすいので、運用担当と月次の作業量まで書いておくと通りやすくなります。

手元にすでに見積書がそろっている段階でも、比較の軸づくりからご相談いただけます。Karkium Webはリモートで各国のプロジェクトに対応しており、日本国内に拠点や常駐の担当者はありません。オンラインでのやり取りが前提で問題ないかどうかも含めて、最初にお伝えします。

ほかの記事

プロジェクトを始める