電話とFAXの受注を、取引先に無理をさせずに減らしていく

受注の入口が電話とFAX、それにメールに添付されたExcelのままになっている。担当者が内容を読み取って基幹システムに入力し、不明点は折り返して確認する。この流れが長年回っていると、業務としては成立している一方で、担当者が一人抜けた瞬間に止まる状態にもなっています。とはいえ、取引先に「今日からこのシステムで注文してください」と言える関係ばかりではありません。ここでは、一斉切り替えを前提にせず、自社サイト側から少しずつ入口を整えていく進め方を扱います。基幹システムの入れ替えの話ではなく、既存の仕組みを残したまま何から始められるか、という範囲の話です。

電話とFAXが減らない理由は、取引先の都合だけではありません

「取引先が電話でないと嫌がるので」と説明されることが多いのですが、実際に聞き取ってみると、理由が別のところにある場合があります。注文書のフォーマットが自社側で用意されていない、Web注文の受付時間が限られている、送ったあとに受理されたかどうか分からない。つまり、電話のほうが確実だからです。

裏を返すと、送った側にその場で控えが残り、受理されたことがすぐ分かる仕組みであれば、電話をかける理由は減ります。多くの現場で先に必要なのは、注文システムの導入ではなく、送信後に何が起きるかが見える状態を作ることです。

もう一つ、社内側の理由もあります。電話で受けると、その場で在庫や納期の相談まで済ませられる。この「相談を含んだ受注」を、フォームだけで置き換えようとすると必ず無理が出ます。相談が必要な注文と、内容が決まっている反復注文を分けるところから始めるのが現実的です。

最初に置き換えるのは、注文そのものではなく定型の依頼です

いきなり受注全体をWeb化しようとすると、例外の扱いで設計が止まります。先に置き換えやすいのは、注文の前後にある定型のやり取りです。ここは取引先にとっても手間が減る部分なので、抵抗が出にくくなります。

具体的には、次のような依頼から始めると効果が見えやすくなります。いずれも既存サイトにフォームを追加する範囲で対応でき、基幹システムに手を入れる必要がありません。

  • 見積依頼(品番・数量・希望納期・送付先を定型項目で受ける)
  • 納期回答の問い合わせ(注文番号を必須にする)
  • 規格書・図面・カタログの請求
  • 返品・不良の連絡(写真の添付を受けられるようにする)
  • 注文内容の変更・キャンセルの連絡(注文番号と変更点を定型項目で受ける)
  • 初回取引の与信・口座開設に必要な情報の受付

フォームで受けた内容を、どこに落とすかを先に決める

フォームを設置したものの、通知先が担当者個人のメールアドレスだけ、という状態はよく見かけます。これでは受信箱が新しいFAX受信トレイになるだけで、担当者が休めば同じように止まります。設計として先に決めるべきは、受けた内容がどこに残るかです。

選択肢は段階的に用意できます。まず、複数人が見られる共有のメールアドレスに送る。次に、送信内容を一覧として蓄積し、対応状況を記録できるようにする。さらに進めば、既存の販売管理システムや顧客管理システムに連携して、二重入力をなくす。最初から最後の段階を目指すと止まるので、順に上げていくほうが確実です。

なお、この仕組みをつくるにあたって、私たちのCRMを新たに導入いただく必要はありません。お使いのシステムがどのような受け口(API、CSVの取り込み、メール解析など)を持っているかを確認したうえで、そこに流し込む形で対応しています。受け口がまったくない古い基幹システムの場合、中間にスプレッドシートや一覧画面を置き、そこから手作業で取り込む運用のほうが安全なこともあります。

やり取りの記録が、あとから探せる状態になっているか

電話で受けた注文は、担当者のメモにしか残りません。FAXは紙で残りますが、日付順の束から特定の一件を探すのは骨が折れます。Web経由で受けた内容は、検索できる形で残せる点が実務上の利点です。数か月後に「この納期はいつ回答したのか」を確認できるかどうかは、トラブル時の負担に直結します。

保存については、税務上の要件も関わります。電子的にやり取りした取引情報の保存方法については、国税庁が電子帳簿保存法に関する情報を公開しています。自社の取引がどの範囲で該当するか、どの保存方法を選ぶかは、顧問税理士に確認してください。サイト制作側で判断できる領域ではありませんが、「フォームで受けた内容が数年後も参照できるか」は設計の段階で決めておく必要があります。

あわせて、誰がその記録を見られるのかも決めておく価値があります。受注担当だけが見られる状態にしておくと、結局は属人化が残ります。逆に全社員が見られる設定にすると、取引条件が広く共有されることになります。運用開始前に権限の線を引いておくと、後から揉めません。

Web化しないほうがよい取引もあります

すべての受注をフォームに載せる必要はありません。仕様が毎回変わる特注品、現場を見ないと数量が確定しない工事関連、価格を都度交渉する取引。こうしたものを無理に定型化すると、フォームに入力したあとで結局は電話でのやり取りが発生し、手間が二重になります。

また、取引先が数社に限られ、そのすべてと長年の関係がある場合も、置き換えの優先度は下がります。この場合に効くのは、注文の受け口を変えることではなく、受けたあとの記録と共有を整えることです。入口はFAXのままでも、受信内容を共有の場所に残す運用に変えるだけで、属人化はかなり緩みます。

逆に、取引先の数が多く、同じ品番の反復注文が中心で、季節や月末に受注が集中する——という条件がそろっているほど、Web化の効果は出ます。自社がどちら寄りかを見てから、着手範囲を決めてください。

よくある質問

取引先にWeb注文を使ってもらえるか不安です。

最初から全取引先の移行を目標にしないでください。まず見積依頼や納期照会など、送る側にも利点がある依頼から用意し、使われた実績を見て範囲を広げるほうが定着します。FAXと電話は当面残す前提で設計します。

基幹システムを入れ替えないと、Web化はできませんか。

多くの場合、入れ替えは不要です。既存システムの手前にWebの受け口を作り、受けた内容をどう渡すかを決める形で始められます。連携方法は、既存システムが持つ受け口によって変わります。

注文フォームに、価格や在庫を表示できますか。

技術的には可能ですが、取引先ごとに価格が異なるBtoBでは、ログインと取引先マスタの連携が前提になります。段階としては後半の話になるため、まずは定型依頼の受付から始めることをおすすめします。

受けたデータの保存は、どこまで対応が必要ですか。

取引の内容と自社の状況によって変わります。電子取引の保存については国税庁が公開している電子帳簿保存法の情報を確認し、顧問税理士に判断を仰いでください。制作側では、参照可能な形で記録を残す設計までを担当します。

海外のリモート制作会社に、この種の業務改善を頼めますか。

フォーム設計、通知と記録の仕組み、既存システムとの連携部分はリモートで対応できます。一方、現場に入って業務フローを観察しながら進める必要がある案件や、対面での定例が前提の案件は、国内の会社のほうが確実です。切り分けたうえでご相談ください。

受注業務すべてではなく、まず一つの依頼をWebで受けるところからご相談いただけます。Karkium Web はリモートで各国のプロジェクトに対応しており、日本国内に拠点や常駐の担当者はありません。受注まわりの仕組みは、すでにお使いのシステムへの連携という形で対応します。私たちのCRMへの乗り換えを前提とはしません。

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